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相続争いが発生しやすい「特別受益」とは?11の対象範囲
相続人が被相続人(亡くなられた人)から生前に財産を贈与や遺贈がある場合は、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。
共同相続人がいる場合は、不公平な相続になるため、民法903条で特別受益がある場合の相続分の計算が規定されています。
正しく理解しないと遺産分割の無効の訴訟が起こることにもなりかねます。
どのような事が「特別受益」になるのかご説明します。
目次
特別受益の仕組み
共同相続人の中に、被相続人の生前に多額の贈与を受けたり、遺言によって遺贈を受けたりする相続人がいる場合、この相続人が承継する相続財産を決めるときに遺贈や生前の贈与を考慮することにより、各相続人の公平を図る必要があります。
特別受益の定めは、相続争いの誘因になるような不公平を防ぐために規定されたものです。
この贈与や遺贈の額を、相続開始した時の財産の額に加算して計算することを「特別受益の持戻し」といいます。
特別受益の計算例
A(被相続人)は、D(長女)に結婚のための持参金として300万円贈与していた。
B(配偶者)とC(長男)は、「Dだけ貰いすぎ」という不公平が生まれます。
下記の図を参照に、相続開始時点で相続財産が1200万円あった場合、生前にD(長女)へ贈与した300万円を加えます。これを「みなし財産」といいます。
合計1500万円がみなし財産となり相続の対象となります。
D(長女)は法定相続分の375万円から生前贈与分300万円を控除した残り75万円となります。
特別受益の対象範囲
どの範囲が特別受益になるのか、特別受益なる場合は「〇」、特別受益にならない場合は「×」で表しています。
- 結婚の際の贈与
〇 結婚のために出してもらった持参金・支度金は原則特別受益になります。
✕ 結納金・挙式費用は親が世間に対する支出だと考えられ、特別受益にはなりません。
- 貸付金
✕ 貸付金は贈与でないため、特別受益にはなりません。
- 新築祝い・入学祝
✕ 親としての通常の援助の範囲である場合は、特別受益になりません。ただし遺産の前渡しとみられるような高額な場合は特別受益になる場合があります。
- 小遣い・生活費
✕ 通常は、扶養の範囲であるため、特別受益になりません。
- 学費(高等教育(大学等)を受けるための費用
✕ 被相続人の経済状況や社会的地位などを考えると、大学等へ通わるのは親としての扶養範囲だと考えられます。留学費用も同様の場合は特別受益に当たらないとされるのが、一般的です。
- 生命保険金
✕ 被相続人の死亡により保険金を受け取る場合、支払いするのは保険会社であるため、原則として特別受益になりせん。
〇 ただし、受け取る相続人と受け取らない相続人の間で、不公平が見逃すことが出来ないほどに大きい特別事情がある場合は、特別受益に準じて持ち戻しとなります。
- 死亡退職金
✕ 労働協約や就業により、遺族の生活保障という趣旨が明らかな場合は、特別受益にあたりません。
〇 ただし、個人企業の役員が死亡した場合のように、長年の功績に報いるという色が強い場合は、特別受益にされることが多いです。
- 遺族給付
×遺族の生活保障のために支払われるものは、特別受益にあたりません。
- 土地の無償貸与
〇 被相続人の上に相続人が建物を建てて所有し、被相続人に対して土地の賃料を払ってなかった場合は、「使用貸借権」に相当する額の特別受益があるとされています。
他人所有の建物が建っていると土地の売却が困難になるため、更地価格の1割から3割まで減額して評価されます。
✕ ただし、被相続人と同居していた場合は、特別受益にあたらない可能性があります。
- 被相続人の建物の無償使用
✕ 特別受益にはなりません。家賃相当額が特別受益にあたるようなこともありません。
- 相続人の配偶者や子に対する贈与
✕ 相続人ではない者への贈与は、原則特別受益になりません。
〇 ただし、名義上は配偶者や子に対する贈与でも、実質的には相続人への贈与である場合は、特別受益とされる可能性があります。
夫婦間の贈与における持ち戻し免除推定
夫婦間の居住用不動産の贈与は、配偶者の生活保障のために行われることが多く、贈与という認識が薄いことがあります。2019年7月の相続法改正によって、要件を満たす場合には居住用不動産の生前贈与がされた場合、持ち戻し免除(特別受益の対象外とする)なされるものとなりました。
◎ 持ち戻し免除の要件
① 居住用不動産であること ②婚姻期間が20年以上 ③贈与または遺贈された場合
被相続人が特別受益を持ち戻す必要がない旨の意思表示をすることで持戻をなくすことを持戻免除の意思表示といいます。
持ち戻し免除をしない場合、配偶者は遺産分割として居住用不動産の2000万円(特別受益)を引いた0円となります。
持ち戻し免除の意思表示した場合、配偶者は2000万円の居住用不動産と1000万円の預貯金を取得することになります。
まとめ
相続争いを避けるためにも「特別受益」を理解し遺産分割をすることが重要になってきます。
実際は、特別受益にあたるかあたらないか、持ち戻し免除の意思表示があったのかという点が争点になる場合が多いようです。
相続について悩みがある場合は、法律の専門家にご相談するのが一番の近道です。
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